ゆらり 夏の川風に吹かれて

矢切の渡し

参道を抜け、柴又帝釈天の横道から江戸川へ。土手をのぼりつめると一気に景色が開ける。広い空、ゆったりと流れる川、一面に広がる緑……。立ち上る草のにおいが心地いい。

川岸に近づくと、東京（柴又）と千葉（松戸）を結ぶ渡し舟が見えてくる。小説や歌謡曲でおなじみの「矢切の渡し」だ。東京に残る唯一の渡しで、３８０年余りの歴史を持つ。始まりは江戸時代初期の農民渡船。江戸への出入りが厳しく規制されていた時代、江戸川の両岸に田畑を持つ農民は、特権として関所を通らず自由に行き交うことができた。

渡し舟に揺られ、川面を滑る爽やかな風を肌で感じながら向こう岸へ。土手の上に降り立つと、目の前にはのどかな田園風景。振り返って柴又の川岸に目をやると、立ち並ぶ住宅の向こうに高層ビル群が遠く霞む。川の両岸には対照的な景色が広がっている。

交通：京成金町線「柴又」駅下車　徒歩１０分


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